どうも、両膝前十字靭帯損傷医学生 KOUです。
絶好調ラガーマンが、右・左・右とステップを切って相手が抜けかかったその場面から、お送りしていきたいと思います。
バキッ
相手のディフェンダーに手で後ろから押されて、地面に倒れこむまでほんのコンマ何秒の出来事、その間に実際に怪我をした人は何を感じるのか。
一般的に前十字靱帯損傷をした人は、ブツっというようなポップ音を経験すると言われています。
KOUの場合は、バキッ、バチっというような音が1つ、足の先から頭の先まで突き刺さるような音・というより振動のようなものを感じた感覚となりました。
この感覚、表現は難しいのですが、何かをとっさに悟る感覚になります。悟るという表現がぴったりな気がします。
私の場合は、
- ただ事ではない事が起きた
- 今年のシーズン、ラグビーができないかも
- 親になんて言おう
- なんでこんなときに
九死に一生の出来事が起きた時や、怪我をしたとき、走馬灯のように時間がゆっくり過ぎ去ると言われていますが、まさにその感覚でした。その時の出来事は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いており、あのバキッという響きは考えるだけで身震いします。
そして、その出来事を思い出すと、自然と涙が出ます。今このブログを書いているこの瞬間ですら涙が出ています。この事件を境にして、本当に涙もろくなりました。
今まで、大きな病気もなく、健康である事に加え、骨折もなく大きなケガをしてこなかった事がいかに幸せなことだったのかを、ひどく痛感した最初の出来事でありました。
チームメイトの愛
膝から崩れおち、目の前が真っ暗になり芝に涙を垂らした、菅平92番グラウンドのレタス畑側の右サイド、10mラインと22mラインの中間地点、そこが私の左前十字靱帯の墓場となっています。
その涙は、決して痛みによるものではありません。前十字靱帯断裂時に激痛があるという文献がありますが、2回の経験でともに痛みを感じたことはありません。
悟りによる涙です。
地面に突っ伏し、体感では5分ぐらいその場で倒れていたような感覚です。目を開ける様なこともできず、一面真っ暗な世界に投げ出されたような精神状態です。
しかし、5分も放置されているような事もなく、自分では記憶にありませんでしたが、夜のミーティングで映像を見たり、周りの人の証言によると、『ア”ー』というような断絶魔の様な声を上げていたようです。ただ事ではないと判断して、練習を中断して敵・味方関係なく近寄ってきて下さり、グラウンドの外まで肩を貸してもらい、退場させてもらったのを頭の片隅に覚えています。
しかし、驚くことに、本能的に倒れてもボールを味方側に出していたことには自分でもびっくりでした。
本能って恐ろしいな。
僅かな希望?
グラウンドの外では、敵チームのトレーナーさんが、自分の膝の状態を確認してくださいました。
怪我の直後である事、痛みをあまり自覚していないことも重なり、トレーナーさんも「前十字靭帯をやっているかもしれないけど、切れてはないかもね」という表現をしてくださり、僅かなら大丈夫かもと期待に持つようになりました。
自分ではダメと思っていても、僅かな可能性にかけてみたいと思ってしまうのは、人間の弱さなんだと振り返って感じてしまうものです。藁をも掴む思いという表現は、まさにぴったりだと思います。
受傷直後の膝の状態
受傷直後30分ぐらいまでの膝の状況に関しましては、
膝の腫れというものはその時までは感じませんでした。
また、ももの前側、大腿四頭筋の緊張、もも周りの筋肉が固まった感覚で、足を伸ばした姿勢が辛く、膝を130度ぐらいに曲げたポジションが楽でした。
受傷直後の応急処置として、一般的なRICE
- R Rest
- I Ice
- C Compression
- E Elevation
を実行しました。
ラグビーの現場では、タックルダミーなどを用いて挙上をすると良いでしょう。
また、挙上している時に周りが気になり、頭を挙げたりすると結果的に心臓の位置より患部が低くなってしまい効果が薄れてしまうので、患部の位置と心臓の位置を意識してElevationすることが重要ワンポイントです。
また、感覚などは問題なく、つま先を触られているような感覚もしっかりあります。
足を付こうと思うと、恐怖心と、膝から下に力が加えづらいような感覚で、足裏全体を使って歩けるような気持ちにはなれませんでした。
この辺の歩けるか、歩けないか自身の2度の経験を合わせると場合によると思います。2回目は今後レポートしますが。
アイシングした直後だったことや、初めての怪我・経験で生体防御的に体が固まっていたのか、様々な要因があると思いますが、事実としてはかかとを軽くつけるのが精一杯でした。
自分の事だけで精いっぱい
怪我をした直後は頭の中が混乱したり、不安や辛さ様々な感情が入り乱れ、他人の事を思う余裕はほぼ無いと思います。
そんな時だからこそ、周りの助けに本当に救われます。話しかけてくれたり励ましてくれる必要もありませんが、一緒に側にいてくれるだけで気持ちが楽になる感覚が自分にはありました。
自分が寂しがり屋過ぎるのかもしれませんが、1人でいる事や、顔を知らない人だらけの病院の待合室で、不安に押しつぶされていたかもしれません。
自分の経験から、ケガ人を一人にさせない事は大切だと思います。今でも病院の診察に付き合ってくれた、部員・マネージャーにはありがとうを伝えても伝えきれないほど、支えになりました。
また、怪我の直後には、2パターンになる傾向があるのではないかなと経験的に思います。
1つは、饒舌になるタイプ。私なりの考察では、取り乱して人と話す事で、不安を和らげているタイプ。この場合は、「うん、うん」と相づちを打ってあげることが大切だと思いました。
私の場合はもう1パターンの黙り込むタイプ。自身の経験なので、怪我をした他の人の意見も是非聞いてみたいですが、
頭の中が整理できず、なにも考えたくなくなる、自分の場合はそんな感覚でした。その場合は、あえて沈黙を破る必要もなく、そっとしておいて大丈夫だと思います。自然と涙がこみ上げてきますが、時間がいずれ解決してくれると思います。
自分の場合、周りの人が様々助けて下さったにもかかわらず、ありがとうぐらいしか言えなくて、冷たい態度を取ってしまったと思っていますが、
もしあなたが側に寄り添ったり、介助してる側の立場であってもそれは咎めないで頂きたいです。
他人のことにまで、気を配る余裕が正直かけていたと今思う、その当時の感想です。
その部分だけは怪我した側の勝手な屁理屈かもしれませんが、理解してあげてください。ましてや初めて大きなケガをした人にとっては。
自分が患者側になって初めて感じた内容が、皆さんに、特に怪我をしたことのない人にお伝えしたい思いとなっています。
さいごに
自分が初めて経験することで分かることも多いですが、すべての物事を経験しようと思うと、身体がいくつあっても足りません。
そのことを補うものとして”一つの経験を様々な事に応用する”か、”実際に経験した人の話を聞くこと”だと私KOUは思います。
そのため、私の経験を皆さんに伝えられたらと思ったのが、このブログを始めたきっかけですので、ぜひ引き続きよろしくお願いします。
次回は、実際に診察に行き、どのような経緯で診断に至っていくかのプロセスを紹介していきたいと思います。